ささの葉さらさら のきばにゆれる お星さまきらきら きんぎん砂子(すなご)…。広く日本人に愛唱されてきた《たなばたさま》である。歌詞は、童謡作家の権藤はなよと詩人の林柳波の共作。下総皖一が1940(昭和15)年に作曲した。
《たなばたさま》は、『うたのほん』下巻に収録された、いわゆる文部省唱歌である。戦時体制において小学校が国民学校と改められ、1941年に国民学校初等科の教科書として『うたのほん』上下巻が作成された。下巻の7曲目に掲載された《たなばたさま》は今日まで歌い継がれ、「国民学校の音楽教科書中、もっとも成功した端正な名曲」、「この曲の浄化されたような透明なリリシズムは他に例を見ない」といった高い評価も見受けられる。(『原典による近代唱歌集成――誕生・変遷・伝播――解説・論文・索引』85頁参照。)5音音階(律音階)で編まれた旋律は、素朴ながら親しみやすく味わい深い。
ピアノソロで演奏する場合は、『宮川彬良のピアノが喜ぶ童謡・唱歌』(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス、2019年)、『コンサートで弾きたい日本の歌 : ピアノソロ』(田代ユリ編著、オクト出版社、2013年)、『こどものポピュラーメロディーズ』(轟千尋編、全音楽譜出版社、2012年)等に掲載されている種々の編曲版を参照されたい。
【主要参考文献】
・『原典による近代唱歌集成——誕生・変遷・伝播——解説・論文・索引』(ビクターエンタテインメント、2000年)