ベルリオーズ :夏の夜

Berlioz, Hector:Les nuits d'été

作品概要

出版年:1841年 
楽器編成:歌とピアノ 
ジャンル:★ 種々の作品 ★
総演奏時間:29分20秒

解説 (1)

総説 : 八木 宏之 (1406文字)

更新日:2018年3月12日
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エクトール・ベルリオーズ(1803-1869)は今日、大規模な管弦楽作品を残した作曲家として語られることが多いが、いくつかの優れた歌曲も残している。ローマ賞の受賞者であり、その死まで常にオペラ作曲家としての成功を夢見ていたベルリオーズが歌曲の分野でも傑作を残したことはなんら不思議なことではない。歌曲集《夏の夜》はそんな彼の歌曲のなかでも最高傑作といえるものである。《夏の夜》の成立過程については、書簡や『回想録』において彼が多くを語っていないことから詳細は明らかになっていないが、1840年から1841年にかけて作曲されたと考えられている。  《夏の夜》は〈ヴィラネル〉、〈ばらの精〉、〈入り江のほとり―哀歌―〉、〈君なくて〉、〈墓場にて―月の光―〉、〈未知の島〉の6曲から成る。テクストは1838年に出版されたテオフィール・ゴーティエの詩集『死の喜劇』から採られている。ベルリオーズはゴーティエの詩の原題をいくつか変更しており、原題では〈ヴィラネル〉は「リズミックなヴィラネル」、〈入り江のほとり―哀歌―〉は「漁師の歌」、〈墓場にて―月の光―〉は「哀歌」、〈未知の島〉は「舟唄」となっている。初稿では《夏の夜》の伴奏はピアノであったが、1843年から1856年にかけてベルリオーズはこの歌曲集の伴奏を管弦楽へと改訂した。その際に〈ばらの精〉の調性をニ長調からロ長調へ変更し、初稿にはなかったオーケストラによる8小節の導入部を書き加えている。また〈入り江のほとり-哀歌-〉の調性もト短調からヘ短調へと変更された。声種に関しては、最終的なベルリオーズの指示によれば、〈ヴィラネル〉、〈君なくて〉、〈未知の島〉はメゾ・ソプラノかテノール、〈入り江のほとり-哀歌-〉はバリトンかコントラルトかメゾ・ソプラノ、〈ばらの精〉はコントラルト、〈墓場にて―月の光―〉はテノールとされている。厳密には一つの歌曲集でありながら一人では歌えないということになるが、今日一般的にはメゾ・ソプラノのためのレパートリーとして定着している。しかし、ピエール・ブーレーズによる録音のように、ベルリオーズの声種に関する指示をできる限り尊重しようとする演奏もないわけではない。  《夏の夜》は、ベルリオーズの生前にはピアノ伴奏版ですら演奏機会に恵まれず、今日でも頻繁に演奏されているとは言い難い。しかし、この作品はマーラーやリヒャルト・シュトラウスらによってその頂点を迎えることとなる管弦楽伴奏付き歌曲という分野の先駆けとなった作品であり、歌曲という分野における表現の可能性を飛躍的に拡大させたという点で極めて重要なのである。ベルリオーズにこれほどの傑作を書かせた最大の要因は、1838年に満を持してオペラ座で上演した自信作《ベンベヌート・チェリーニ》の大失敗であろう。この失敗により、彼のオペラ作曲家としての成功への道は事実上閉ざされたと言える。それ以降、彼は常にオペラティックな表現への欲求と、それをオペラという形で実現できないフラストレーションを抱え続けることになった。しかし、オペラ作曲家として成功できなかった故に、彼はオペラへの情熱とエネルギーを他の分野へと変容し、昇華させることができたのである。その一つがこの《夏の夜》であり、この作品によって歌曲は室内楽的なものからより大規模で劇的な表現媒体へと発展していくことになったのである。

執筆者: 八木 宏之

楽章等 (6)

ヴィラネル

総演奏時間:2分20秒 

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ばらの精

総演奏時間:6分00秒 

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入り江のほとり-哀歌-

総演奏時間:7分00秒 

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君なくて

総演奏時間:5分00秒 

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墓場にて-月の光-

総演奏時間:4分40秒 

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未知の島

総演奏時間:4分20秒 

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