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ナザレ :オデオン

Nazareth, Ernest:Odeon

作品概要

楽曲ID:18455
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:種々の作品
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

執筆者 : 小林 由希絵 (1071文字)

更新日:2018年3月12日
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エルネスト・ナザレ作曲〈オデオン〉 解説;小林由希絵  1910年に作曲。この曲が発表された2年後の1912年には、リオ・デ・ジャネイロのCasa Edisonにて自作自演のレコーディングが行なわれ、〈オデオン〉はレコードと共にブラジル全土へと広まった。今も多くの人に愛されているナザレを代表する曲である。  タイトルの「オデオン」は、当時ナザレが演奏していたリオの映画館シネマ・オデオンから取られたもの。この曲は、シネマ・オデオンの経営者であるZambelliのために捧げられている。 今でこそ、映画はポピュラーな娯楽文化のひとつとして広く親しまれているが、ナザレの生きた20世紀初頭においては、映画は最先端の文化であり、映画館シネマ・オデオンは知識人や上流階級の社交場として活気にあふれていた。 シネマ・オデオンは、この曲が作られた前年の1909年に開業。オープン当初から弾いていたナザレのピアノ演奏は、たちまち大評判となり、開演1時間前には彼の演奏を聴こうと押し寄せた人で長蛇の列が出来るほど。新聞各紙もこぞって、ナザレのことを「ブラジル・タンゴの王」と絶賛した。 シネマ・オデオンの聴衆の中には、ブラジル旅行中であったフランスの作曲家ダリウス・ミヨーもいたという。初めて触れたブラジル音楽の躍動感あふれるシンコペーションのリズムに心奪われたミヨーは、すぐさまブラジルをテーマにした創作活動を開始。〈ブラジルへの郷愁〉〈男とその欲望〉〈屋根の上の牛〉などの作品を残し、ミヨーの音楽に大きな影響を与えた。もし、ミヨーがシネマ・オデオンでのナザレのピアノ演奏を聴いていなかったら、これらの名曲たちは生まれなかったかもしれない。  曲の構成はA-B-A-C-A。(中にはA-B-A-C-A-B-Aとなっている楽譜もある。) 冒頭のAの部分は、付点のリズムで下降するベースラインに、裏拍のリズムが入るだけのごく単純なもの。しかし、シンプルな音楽の中にもナザレらしさがキラっと光り、ミヨーも魅了されたブラジルらしいリズムが効いている。続くBからは、嬰ハ短調からホ長調へと転調し、甘くて華やかな雰囲気をまとい、ブラジルらしさと共にロマンチックな香りも感じられる。ここにはブラジルに育ち、ブラジル音楽の影響を受けながらも、小さな頃から尊敬してやまなかったナザレのショパンへの憧れの想いが見てとれる。 ブラジルらしい小粋なリズムと、甘く華やかな調べで、知識人や上流階級が夜な夜な集った煌びやかなサロンの空気を、ナザレはピアノを用いて見事に表現している。

執筆者: 小林 由希絵
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