浅川 春男 : ミケランジェロのピエタに寄せる4つのヒムノディー(讃美歌)
Asakawa, Haruo : Hymnody of four approach to Michelangelo's Pieta
作品概要
解説 (1)
解説 : 日置 寿美子
(551 文字)
更新日:2022年3月21日
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解説 : 日置 寿美子 (551 文字)
浅川春男《4つのヒムノディー》
浅川がハンガリーのリスト音楽院在学中の1974年の夏にイタリアへ旅行をした折に、ミケランジェロ(1475~1564)の4つのピエタ像に出会い、深い感動と霊感を得て作曲された作品集。ヒムノディーとは讃美歌または聖歌のことである。ピエタ(Pietà)とは、イタリア語で哀れみ・慈悲などの意味で、聖母子像のうち、死んで十字架から降ろされたキリストを抱く母マリア(聖母マリア)の彫刻や絵画を指す。
4曲のそれぞれが、バチカン・フィレンツェ・ミラノにあるミケランジェロの4つのピエタ像(そのうち三体は未完成)に捧げられており、第1曲はNotre Dame(聖母マリア)、第2曲はMagnificato(マリア賛歌)、第3曲はRicercare、第4曲はStabato-Mater(悲しめる聖母は立てり)という副題がつけられている。どの曲も教会の鐘の音を模したピアノの和音で始まり、また終わるが、すべて微妙に違っている。この鐘の音の原点は、ハンガリーで毎朝聴いたものを何とかピアノで表現しようと工夫を重ねたものだと作曲者自身が語っており、浅川作品の象徴とも言えよう。
テンポ、強弱の指示は一切無く演奏者の感性に任されているが、祈りの音楽であることを意識して演奏することが重要である。