作曲者より -
その近代性と革新的な書法により、ドビュッシーの「ピアノのための24の前奏曲」は20世紀音楽への道を切り開きました。ピアニスト、ユーグ・ルクレールはドビュッシーの残したこの偉業を見つめ直すため、現在を代表する主要な現代作曲家たち22人に協力を呼びかけました。こうして完成された22の新作はドビュッシーへのオマージュとして、また作曲家たちの自由な解釈によって、2巻に渡る全24曲の前奏曲のそれぞれの曲間に挿入されました。ドビュッシーから今日までの100年の月日を、まるで重なり合うかのように編まれた23人による合作は、各巻ともに休憩を挟むことなく1時間20分に渡るプログラムとして、2012年パリにて初演されました。
「秋風(Vent d'Automne)」は、第2巻の始まりである「霧」と「枯葉」の間に差し込まれます。この小品は2つの前奏曲を滑らかに繋ぎあわせるために、単純な模倣としてではなく、音響がもたらす空気感を大事にしています。それは秋の訪れを知らせる初風であったり、秋霜が降りる早朝、そして勿論、歯を食いしばるような厳寒の予兆を思い起こさせることでしょう。同時に、ドビュッシーによって生み出された秋を連想させる詩的コード、宙に浮いた時の間隙、その時間に捕われない普遍的で定式化された現感覚に包み込まれています。
この作品を、靄と陰の倍音を聴く奏者、岡田真季に献げます。
ユーグ・デュフール