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ピアソラ :忘却

Piazzolla, Astor:Oblivion

作品概要

楽曲ID:17395
楽器編成:室内楽 
ジャンル:種々の作品
総演奏時間:5分00秒
著作権:保護期間中

解説 (1)

執筆者 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部 (1061文字)

更新日:2018年3月12日
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ピアソラは、映画や舞台のための音楽も多く残しており、この曲も1984年に公開されたイタリア映画『エンリコ4世』のために書き下ろされた5曲のうちの1曲である。(残念ながら映画はヒットせず、音楽も映画公開当初は話題にならなかったが。)

ある時、映画音楽用のインストゥルメンタルであったこの曲に、フランス語の歌詞を付けて歌う歌手が現れた。それも同時期に2人の歌手が、それぞれ独自の歌詞をつけて歌った。

1人は、ミルバというイタリア人カンツォーネ歌手であった。ミルバはミーナ、オルネラ・ヴァノーニと共に、三大プリマドンナと並び称された美声の持ち主。ピアソラが自身の作品を歌った歌手の中で「最高の歌い手」として絶賛したほどである。ピアソラとミルバはパリの歴史ある劇場、ブッフ・デュ・ノールで初共演で大成功をおさめ、1988年には来日公演も果たしている。

もう1人は、アメリータ・バルタール。アメリータはピアソラの2番目の妻である。 ピアソラは、1967年に詩人のオラシオ・フェレールと共にオペリータ「ブエノスアイレスのマリア」を生み出して以降、〈ロコへのバラード〉〈チキリン・デ・バチン〉〈我が死へのバラード〉〈最後のグレラ〉〈白い自転車〉など数多くの歌曲を残す。これらの歌曲の初演を務めた人物こそ、アメリータである。

映画音楽としては不発に終わってしまったこの曲だが、フランス語の歌詞が付き、歌曲として再び世に出た〈忘却〉は大ヒット。ピアソラの傑作の一つとして様々な編成にアレンジされ、今も長く愛される名曲となった。

ところで、この曲の音楽的な面を考察していこうと思う。もの悲しく沈んでいくかのように下降してゆく旋律に、ピアソラらしい和声が加わることで、えも言えぬ美しい響きをたたえた一曲となっており、曲全体をゆったりとしたミロンガのリズムが包み込んでいる。

ミロンガとは、ヨーロッパからやって来たハバネラのリズムと、ラテン・アメリカやアフリカから奴隷として連れて来られた黒人たちの強烈なリズムが、互いに影響し合いながら融合したリズムで、タンゴの源流とも言える。 ミロンガというと、本来はテンポの速いものが一般的だが、ピアソラの場合、この〈忘却〉をはじめとして、〈天使のミロンガ〉〈悪魔のロマンス〉〈ミロンガ・フォー・スリー〉など、どれもゆったりとしてテンポのものばかりである。

「ミロンガ=アップテンポの曲」という、これまでのタンゴの常識を打ち破り、スローテンポなミロンガを編み出したのも、ピアソラ独自の新しいタンゴの表現だったのであろう。

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