加古 隆 :ポエジー(グリーンスリーブス)
Kako, Takashi:Poesie (Greensleeves)
総説 : 仲辻 真帆 (578文字)
《ポエジー》は、加古隆の音楽における発想の原点であり、彼の音楽スタイルを確立する出発点となった作品でもある。1985年に発表されたこの楽曲は、テレビコマーシャルに使用され話題を呼んだ。 1971年に東京藝術大学大学院を修了した加古隆は、パリ国立高等音楽院(コンセルヴァトワール)作曲科に入学し、オリヴィエ・メシアンに師事。1973年にはフリー・ジャズ・ピアニストとしてデビューする。1990年代から多くの映画・ドラマの音楽を手がけるようになり、とりわけNHKの「映像の世紀」テーマ曲《パリは燃えているか》が大きな反響を得た。 加古によると、誰でも知っている旋律を取り上げてみてはどうかという評論家の助言を受け、イギリス民謡《グリーンスリーブス》を基に作曲したのが、《ポエジー》である。民謡の素朴かつ訴求力のある旋律が独特の「加古節」と相俟って、弾き応えのあるピアノ曲に仕上がった。 中間部は、16分音符が左手に担われ、右手が全音符、8分音符、16分音符、付点音符などを組み合わせながら伸びやかに旋律をうたう。作曲者の心中には、「森の中、緑の木々の間を風に乗ってゆっくりと流れていく霧や、美しい川の流れといった自然の詩情溢れる情景」があった。前打音に風がゆれ、16分音符に川がよどみなく流れる。長2度を重ねた不協和音も、森の深みのなかでは心地よく響く。
ポエジー(グリーンスリーブス)
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