スカルラッティ, ドメニコ : ソナタ 「猫のフーガ」 ト短調 K.30 L.499
Scarlatti, Domenico : Sonata Fuga del gatto g-moll K.30 L.499
作品概要
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:4分10秒
著作権:パブリック・ドメイン
ピティナ・ピアノステップ
23ステップ:展開1 展開2 展開3
楽譜情報:4件解説 (2)
執筆者 : 丸山 瑶子
(930 文字)
更新日:2010年1月1日
[開く]
執筆者 : 丸山 瑶子 (930 文字)
ソナタ K1. - K.30について
スカルラッティの鍵盤のためのソナタのうち、概ね推定される作曲年代に基づいて番号付けされたカークパトリック番号でK. 1から30まではEssercizi per Gravicembaloとして出版され、騎士階級を下賜された返礼として、ポルトガル王ジョアン5世に献呈された。(なおこの曲集は一般的に《チェンバロのための練習曲集》と訳され、またスカルラッティの鍵盤楽器のための作品は主にチェンバロ用と推定されているが、研究の現状では、チェンバロ以外の鍵盤楽器が完全に想定外であるかははっきりしていない。)これは生前に唯一、作曲家自身が出版した曲集で、その序文は作曲家自身による真正な文書資料としての価値を持つ。
序文では、曲集が演奏技法の修練を目的としていることが示唆され、彼が音楽教師として仕えたマリア・バルバラの日々の練習用という実用的な目的で書かれたと推測できる。作曲年代に関しては、Esserciziはかなり前に書かれたソナタを推敲したものとして、多くの研究者が早期の作曲年代を主張しているが、結論は未だに出ていない。
全30曲の配列は発展的学習を可能とするもので、後の作品になるほど長く、難しくなるよう並べられている。形式は2部形式を基本とする。また作品の冒頭が両手の短い模倣となるのはスカルラッティのソナタに典型的で、多くの場合、模倣となるのは作品の残りの部分の主要素材と見たところは関連が薄いと思われる音形である。
なお序文には曲集全体の音楽的内容に触れた言葉もあるが、その解釈については、序文が謙遜や建前の入りやすい文章であることも手伝って、繰り返し議論されている。
K. 30 ト短調 FUGA Moderato
「猫のフーガ」という呼称を持つ、Esserciziの中で唯一の4声フーガ。SutcliffeはK.30を古い対位法に対する尊敬の現れとする解釈には否定的であり、「対位法の滑らかさ」が避けられていると指摘する(Sutcliffe, 2003)。全体的に見て、主題、対主題が和音進行となるところや、ゼクエンツの占める割合が比較的高い。また主題の増2度、減4度進行をはじめとした不協和な響きも作品を特徴づけている。
解説 : 大井 和郎
(882 文字)
更新日:2026年1月30日
[開く]
解説 : 大井 和郎 (882 文字)
少し解説も兼ねます。このソナタが「ネコのフーガ」と呼ばれている理由を述べます。スカルラッティの飼っていたネコが、勝手にハープシコードの上を歩いたところで聴かれた音が素材になっているという説が有力です。そしてこれは完全なフーガであり、2部形式のソナタではありません。
完全なフーガとは言え、補足しなければならない事もあります。3声のフーガの場合、出てこない声部には、例えばバッハの場合、休符が書かれることも多いのですが、このフーガにはそれが書かれておりません。例えば、66小節目を観たとき、1拍目のバスは付点4分音符で書かれており、これは1拍分しか伸びませんが、奏者によっては2拍分ペダルで伸ばす事もあります。また、50小節目1拍目のような場所は本来であれば2拍目に1拍目の付点4分音符は鳴っていないはずなのですが、休符が書かれてあることも無く、その辺りが厳格さに欠けます。
別の言葉で言うと、その辺りの、音価、休符等は、即興的に処理してしまって良いとも考える事ができますので、先ほどの66小節目の例の様に、本来の音価以上に伸ばすことも許されるのでは無いかとも思います。
とは言え、ポリフォニーの秩序は守られるべきであり、声部の独立には常に注意を払って下さい。例えば、66小節目の右手内声、Es Es F Es は、1拍目のEsが2拍目のEsにタイで繋がれていますが、2拍目に入ると左手のAが入って来ますので、この音の音量によっては、タイがかき消される恐れがあります。もっと御法度な例としては、右手内声のEsを2拍目で離してしまう例で、これでは2拍目の表拍に8分休符が入っている事と変わらなくなります。
ポリフォニーの秩序を守るためには、これら、タイで伸ばされている音符には特に注意し、これらのタイが、1つめから2つ目の音符に繋がれて伸びている状態を耳で聴いても明白に繋がれていなければなりません。
