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エステン (オースティン) :人形の夢と目覚め Op.202

Oesten, Theodor:Doll's Dreaming and Awakening Op.202

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:性格小品
総演奏時間:3分00秒

解説 (1)

総説 : 長井 進之介 (983文字)

更新日:2018年3月12日
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テオドール・エステン(オースティン、1813-1870)は、ドイツ・ベルリン出身のピアニスト・作曲家、ピアノ教師である。ピアノと作曲の他に声楽と弦・管楽器と幅広い楽器の演奏技術を習得した。彼の作品は、華やかな技巧と歌謡性豊かな旋律を融合した、詩的な標題を持つ性格小品が多い。  〈人形の夢と目覚め〉は単独で愛奏されるが、全6曲から成る《子供の情景 op. 202》の第4曲として書かれたもの。曲は全体を通してハ長調で書かれ、4つの部分に分けることができる。それぞれに英語による発想表記が書かれ、情景を演奏者が想像しやすく(表記のない版もある)、エステンの優れたピアノ教師としての力量を窺わせる、演奏技巧を発展させる為の工夫が随所に散りばめられていることも特徴である。  最初の部分はアンダンティーノ。「子守歌(ゆりかごの歌)」という発想記号が示す通り、左手が刻むゆったりとした分散和音に乗せて、右手は3度の音型を奏する。この部分は理想的な手の形を保ちながら、上声をいかに美しく響かせるかを学ぶことができる。終結部での臨時記号による部分的転調が開始すると、「人形眠る」の発想指示の通り、右手の旋律性が失われ、同音反復となる。最後は両手が交差し、右手は2オクターヴ下へと移動する。眠りに落ちていく様が視覚的にも伝わってこよう。  アンダンテ・モデラートは、「人形の夢」と書かれており、旋律性に特化している。右手は2小節単位で進行し、人形がしゃべったり歌ったりしている様を思わせる旋律を奏でていく。それぞれの楽想ごとに強弱で起伏を見せながら、全体を通じてクレッシェンドが行われていく為、音楽の構成力も見に付くようになっている。また、この部分で経過的に行われるイ短調への転調は、現実から離れた夢の中にいることを示唆する効果がある上、夢の儚さをも醸し出している。美しい夢はやがて終わりを迎え、「人形の目覚め」へと移る。3小節と短いが、同時に6つの音を鳴らす、和音を掴む技法とリズムの細かいカウントが要求される箇所である。  「人形の踊り」と書かれたアレグレット・モデラートでは、16分音符による音階やアルペジオといった指の細かい動きが求められる。しかし指の練習には終始しない。軽やかなギャロップのリズムに乗せて、人形が楽しそうに旋回したり跳躍していく様が描かれていくのである。

執筆者: 長井 進之介

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