ラヴィーナ :様式と完成の12の練習曲 Op.14
Ravina, Jean Henri:Douze études de style et de perfectionneme Op.14
執筆者 : 上田 泰史 (854文字)
ラヴィーナが世紀前半に出した3つの練習曲集(作品1、3、14)のうちの第3集。1840年代にはいると、練習曲というジャンルは卖に三度やオクターヴといったテクニック上の難しさばかりでなく、歌唱的な旋律のフレージング・繊細な強弱の変化をいかに表現するかという点にウェイトが置かれるようになる。実際、この曲集には多くの強弱記号に加え、イタリア語による楽想用語が入念に書き込まれている。《様式と向上の練習曲》というタイトルは、音楽院の先輩にあたるF. カルクブレンナーが作品143で用いたのがおそらく最初である。このタイトルは、曲集の内容から察するに、バレエ、ロマンス、行進曲といった様々な曲種をそのスタイルに応じて引き分ける能力とそれぞれに様式特有のテクニックを向上させることを意図してつけられたものである。説明の便宜上、ラヴィーナの曲集の各曲のスタイルを表にすれば次のようになる。
1
バレエ
7
ファンファーレ、速歩行進曲
2
歌曲(ロマンス)
8
3
9
ワルツ
4
歌曲(オペラ・アリア)
10
カプリス
5
歌曲(シャンソネット)
11
6
器楽(ピアノ・弦楽器特有の動き)
行進曲
「バレエ」ではスタッカートの飛び跳ねる動きに特徴があり、「歌曲」では様々な音型で旋律・伴奏型が用いられ、各パートの繊細な弾き分けが要求される。第7曲目はロッシーニ風の序曲で、ラヴィーナが若い頃編曲して親しんだ《ウィリアム・テル》序曲を思わせる。マルモンテルの回想によればロッシーニはこの若きピアニストの才気に感じ、しばしば自作のピアノ小品をラヴィーナに演奏させたという。ラヴィーナは後に「高名なわが友、ジョアキーノ・ロッシーニ」に傑出した《祈り―音楽詩》作品51を捧げている。彼は40年代から50年代初めにかけて、人前で自作の練習曲を弾いた記録が残っているが、おそらくこの曲集からもいくつかが演奏されたことであろう。なお、この練習曲集は先立つ大作《12の演奏会用練習曲》作品1と同様、パリ音楽院の教材に採用された。
第1番 Op.14-1
調:ハ長調 総演奏時間:1分30秒
動画(2)
解説(0)
楽譜(0)
第2番 Op.14-2
調:変イ長調 総演奏時間:3分00秒
動画(1)
第3番 Op.14-3
調:イ長調 総演奏時間:2分30秒
第4番 Op.14-4
調:変ト長調 総演奏時間:2分00秒
第5番 Op.14-5
調:イ短調 総演奏時間:2分00秒
第6番 Op.14-6
調:ロ短調 総演奏時間:2分30秒
第7番 Op.14-7
調:変ホ長調 総演奏時間:2分00秒
第8番 Op.14-8
調:ロ長調 総演奏時間:3分00秒
第9番 Op.14-9
調:ニ長調 総演奏時間:2分30秒
第10番 Op.14-10
調:嬰ヘ短調 総演奏時間:2分30秒
第11番 Op.14-11
調:変ニ長調 総演奏時間:3分30秒
第12番 Op.14-12
調:ト長調 総演奏時間:5分00秒
様式と完成の12の練習曲 1. ハ長調
様式と完成の12の練習曲 8. ロ長調
様式と完成の12の練習曲 10. 嬰へ短調
様式と完成の12の練習曲 12. ト長調
様式と完成の12の練習曲 9. ニ長調
様式と完成の12の練習曲 6. ロ短調
様式と完成の12の練習曲 2. 変イ長調
様式と完成の12の練習曲 7. 変ホ長調
様式と完成の12の練習曲 4. 変ト長調
様式と完成の12の練習曲 3. イ長調
様式と完成の12の練習曲 5. イ短調
様式と完成の12の練習曲 11. 変ニ長調
ラヴィーナ:様式と完成の12の練習曲 Op.14 第1番
ラヴィーナ:様式と完成の12の練習曲 Op.14 第12番
ラヴィーナ:様式と完成の12の練習曲 Op.14 第5番