吉村 弘 1940-2003 Yoshimura, Hiroshi
解説:須藤 英子 (512文字)
更新日:2018年4月25日
解説:須藤 英子 (512文字)
1940年、横浜に生まれた吉村弘は、日本の環境音楽の第一人者である。早稲田大学文学部美術科卒業後、独学で作曲を学んだ吉村は、「環境としての音楽」 、「空気に近い音楽」を目指し、 サウンド・デザインやグラフィック・デザイン、 サウンド・オブジェやパフォーマンスなど、 ジャンルを横断した様々な創作を行った。
特にTOA株式会社との共同施工で、横浜市総合運動公園内立体音響作品(横浜市、1997年) や神戸市営地下鉄海岸線のサウンド・サイン (神戸市、2001年)など、公共空間の音デザイン事業を多く手がける。また美術館などで、環境音をテーマとしたワークショップにも力を注いだ。国立音楽大学音楽デザイン学科や千葉大学 工学部工業意匠学科にて非常勤講師を歴任。
作品のほとんどは、公共空間のサウンド・デ ザインやシンセサイザーなどによるCDとして残されているが、珍しく演奏用の楽譜が存在する作品に、唯一のピアノ作品集《静けさの本》 (春秋社、2003年)がある。家にピアノがなく、 ピアノに憧れていたという吉村が書き下ろしたこの作品集は、環境音への眼差しとピアノの音への敬意に溢れた最後の著作となった。2003 年、63歳で逝去。
執筆者:
須藤 英子
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