レイバック 1817-1891 Leybach, Ignace Xavier Joseph
解説:上田 泰史 (1720文字)
更新日:2018年3月12日
解説:上田 泰史 (1720文字)
【イグナース=グザヴィエ=ジョゼフ・レイバック, Ignace-Xavier-Joseph Leÿbach, 1817.7.17 ガムスハイム生~1891.5.23, トゥールーズ没】 フランスのピアノ奏者、オルガン奏者、作曲家。アルザス地方、オー=ラン県のガムスハイムに生まれる。この町は、ストラスブールの北北西約15キロメートルに位置し、ライン川に接している。川の対岸はもうドイツである。レイバックは、この町で兄から音楽の手ほどきを受け、次いで、ストラスブールでフィリップ・ヘルターPhilippe Hoerter (1895-1863)に和声と対位法を、ジョゼフ・ヴァッケンタレールJoseph Wackentaler(1795~1869)にオルガンを師事。ヴァッケンタレール師は父の代から続く音楽家一族で、ストラスブール大聖堂の楽長を務めていた著名な音楽家だった。1838年、彼は兄がオルガン奏者を勤めていたサン=ピエール=ル=ヴュ教会で、兄の後を引き継いだ。 レイバックに関する伝記記事の多くは、彼がその後、パリに移り、ピクシス、カルクブレンナー、ショパンに師事したとしている。ピクシスが1824年から40年までパリで生活したこと、カルクブレンナーが24年にロンドンからパリに帰国、ショパンが31年にパリに到着したことを考え合わせると、レイバックは、ピアノとピアノ音楽が大きな変革期を迎えていた30年代の末から40年代にかけてパリに滞在していたことになる。だが、彼は30歳を過ぎるまで作品を出版しなかった。1891年6月7日に『ル・メネストレル』紙に掲載されたレイバックの死亡記事(これは、後の伝記記事の典拠になっている)は、レイバックは1847年に初めて自作品を出版したというが、フランス国立図書館に所蔵されているもっとも古い彼の作品は《田舎風のイディール第1番》作品10で、1852年の刊。1844年に、レイバックはトゥールーズ大聖堂のオルガニストに選抜され、以後、73歳で亡くなるまでこの街で活動した。前半生に作品を出版しなかったにも拘わらず、驚くべき多作家で、作品番号にして290番までの作品がある。大部分はピアノ独奏作品で、オペラの主題に基づく幻想曲、トランスクリプション、独創作品(性格的小品)、更に、教育的作品では、ピアノとハルモニウムのための作品、4ヶ国語に翻訳された『ハルモニウムの理論的・実践的メソッド』(1864刊)、『実践的オルガニスト』がある。彼の作品は、フランスのみならず、ドイツ、イタリア、ハンガリーなど、ヨーロッパ諸国で広く出版された。 <参考文献> François-Joseph Fétis, « LEYBACH (Ignace) », Biographie universelle des musiciens et bibliographie générale de la musique, Supplément et complément, M. Arthur Pougin (dir.), vol. 2, Paris, Firmin-Didot, 1880, p. 108. Kurt Lueder, « Leÿbach, Ignace-Xavier-Joseph », Dictionnaire de la musique en France en XIXe siècle, Joël-Marie Fauquet (dir.), Paris, Fayard, 2003. F. Édouard Sitzmann, Dictionnaire de biographie des hommes célèbres de l'Alsace : depuis les temps les plus reculés jusqu'à nos jours, tome 2, Rixheim, F. Sutter, 1909, p. 153. Anonyme, « Nécrologie », Le Ménestrel, 57e année, n° 23, 7 juin, 1891, p. 184.
作品(8)
ピアノ独奏曲 (4)
ノクターン (2)
★ 種々の作品 ★ (4)