ロシェロールはフランスにルーツを持つアメリカ人で、パリへの留学経験もあるためフランス音楽の影響を強く受けている。ただし、作品には通常、英語のタイトルが付き、速度標語や楽語も一般的なイタリア語または英語を使用する。本作では、フランス出身の義父母の思い出に捧げる（In memory of "mon beau-père et ma belle-mère," Guy Jacques and Monique Lyon Rocherolle）とする成立事情から、例外的にフランス語表記を採用したもの（Prélude I. Léger, sans presser 軽やかに、急がずに 4/4│Prélude II. Tranquille et expressif 静かに、表情豊かに 12/8│Prélude III. Vif et précis 速く明確に 4/4）。曲想もフランスの印象派風にまとめられ、淡いパステルカラーの色調を思わせる。最終曲で大胆な和弦を響かせる場面もあるが、一定の抑制がきき、決して激することはない。ドビュッシーの《子供の領分》と《ベルガマスク組曲》の中間くらいの難易度。