1931年8月、ヴィルム(アルザス地方)にて作曲。出版譜表示の楽器編成は「2台クラヴサン、またはハープとピアノのための」。一方、マルク・オネゲル編纂のミゴ作品カタログでは、前記の編成に加え「2台ハープまたは2台ピアノ」と追記され、ピアノデュオのカテゴリに入れられている。オネゲルの基本方針は一貫してミゴ自身の意向に忠実に沿うことにあるから、本作はほぼ正規のピアノデュオ作品とみてよい。クラヴサン奏者、ポリーヌ・オーベールへの献呈。「一人の前奏曲」(クラヴサンまたはピアノ独奏)とセットで発表された。「二人」と「一人」は実質的には同じ曲で、「一人」を交互に弾き合うよう二人に振り分け、片方のパートが装飾を加えるよう仕立てたのが「二人」となる。「二人」の演奏にあたっては「一人」の譜面も参照し、具体的にどこが「一人」の弾く要部に該当し、どこを装飾部と捉えるべきかを確認したい。6/8拍子、ミクソリディア旋法のト調で開始、ハ長調主和音で終止。古代旋法が一種の古拙の味を出す。冒頭の「優雅で柔軟に」(Gracieux et souple)とその直後の「やさしく悲壮に」(Tendre et pathétique)の二つの大きな楽想が軸となり、テンポには細かい揺れがある。
一陣の風が吹き渡るようなさり気なさは、被献呈者の主力レパートリーたるバロック期フランスのクラヴサニスト作品の淡麗なたたずまいとも通底する。「二人」では多様な装飾が加わることで、豊かな音の綾を生む。錯綜するポリリズムによる独特のゆがみ、よじれが出色。確かな現代性を具えた佳品。