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フィリップ :《コラール変奏曲》Op. 74(原曲:ヴィドール)2台ピアノ

Philipp, Isidor:Choral et variations Op. 74 (Ch. M. Widor)

作品概要

楽曲ID:90016
出版年:1903年 
初出版社:Heugel
楽器編成:ピアノ合奏曲 
ジャンル:トランスクリプション
総演奏時間:17分00秒
著作権:要調査

解説 (1)

解説 : 西原 昌樹 (1113文字)

更新日:2024年6月16日
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ヴィドールの《コラール変奏曲》Op. 74 (1900) をイシドール・フィリップが2台ピアノ用に編作したもの。フィリップはヴィドールと親しかった。2人の関わりについてはヴィドールの《トッカータ》の2台ピアノ用編曲の項をご参照いただきたい。フィリップがバッハのオルガン曲の2台ピアノ編曲集(全12曲)をリコルディから発表した際には、バッハの権威であったヴィドールが詳細な解説文を寄稿するなど、ヴィドールはフィリップの編曲活動に全面的に協力した。本作もヴィドールの強い要望と積極的な支援のもと、フィリップが編作にあたったものと推測される。原作は、当代随一のハーピスト、アルフォンス・アッセルマンに献呈されたハープと管弦楽のための協奏的作品。ヴィドール自身によるハープとピアノのためのリダクション版が先に出された。本作と同様にハープの協奏的作品であるドビュッシーの《神聖な舞曲と世俗的な舞曲》、ラヴェルの《序奏とアレグロ》では、作曲者によるハープとピアノのリダクション版がそのまま2台ピアノ版と兼用として扱われているが、本作はそれらとは異なり、フィリップが2台ピアノ用に新たに編作し直したもの。「演奏会用トランスクリプション」(Transcription de concert)と銘打たれ、リダクション版とは完全に別個のバージョンである。

アンダンテ、4分の4拍子、変ト長調。穏やかな語り口のモノローグでひっそりと始まる。コラール主題は高貴であってしかも親しみやすい。この主題自体が、歌謡的とも器楽的ともつかぬ、底知れない深みを湛える。やがて本格的に展開するバリエーションは緩急自在、千変万化する表情を見せながら、何度かの高揚のうねりを経て、ついにあふれ出る歓喜を誇らかに歌い上げるフィナーレへと到達する。徹頭徹尾、正統派そのものの書法が一貫し、悠揚迫らぬ風格を湛える。そこには一糸の乱れも、逸脱も、破調もない。どこまでも折り目正しく端正な書法の裏側には、聴き手を知らず知らずのうちに巨大な多幸の渦へと巻き込んでいく圧倒的な推進力が潜んでいる。人間のあらゆる感情を肯定し受けとめる包容力。いつまでも聴く者の心に残る温かな充足感。熱心なオルガンファン以外には今もって十分に知られているとは言い難い、ヴィドールの真骨頂がここにある。フィリップはそのあらゆる美質を2台ピアノで再現することに成功した。19世紀が終わろうとしてもなお、ロマン派の黄金時代の命脈は途絶えることなく、驚くほど鮮烈な残照を放ち続けていたのである。汲めども尽きぬ近代フランスの2台ピアノの名曲の宝庫。その一端に、一人でも多くの方に触れていただきたいと切に願っている。

執筆者: 西原 昌樹
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