ロシェロール : イッツ・ミー・オ・ロード(黒人霊歌集)
Rocherolle, Eugenie Ricau : It's Me, O Lord (Traditional Spirituals)
作品概要
出版年:2006年
初出版社:Hal Leonard
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:リダクション/アレンジメント
総演奏時間:17分00秒
解説 (1)
解説文 : 西原 昌樹
(564 文字)
更新日:2023年3月5日
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解説文 : 西原 昌樹 (564 文字)
ジャズ、ブルース、カントリー、ロック、ソウル、ファンク。アメリカ音楽の底流には黒
人霊歌が息づいているという。本書は、代表的な黒人霊歌をロシェロールがピアノソロ用
にアレンジしたものである。チェルニー30番程度。最終曲「スウィング・ロー・スウィー
ト・チャリオット」は、ラグビー・イングランド代表チームの応援歌でもあり、人種の相
違を超えて世界中で愛唱される名歌。ニューオーリンズに生まれ育ち、幼少より本場のジ
ャズに親しんだロシェロールはジャズのルーツである黒人霊歌への愛着、思い入れはひと
きわ深い。本書のはしがきでは黒人霊歌の淵源に触れ、至高の芸術性への畏敬の念を綴っ
たうえ、本書を、少女時代のかけがえのない5人の友人の追憶に捧げるとしている。ここ
では、メロディとコードを小器用にパラフレーズするような安直なアプローチは排され、
虚飾をはぎ取った書法でコール・アンド・レスポンスも含む黒人霊歌の真髄に迫り、広く
世界に知らしめんとする熱のこもった創意が見て取れる。スローなナンバーでは心身の苦
痛に耐え、希望の光明を見いだしていく不屈の強靭さをすくいあげ、ゴスペル調のアップ
テンポのナンバーでは抑えきれぬ法悦を爆発させる。黒人霊歌の重要性をうすうすとは感
じていても手がかりを見つけにくい私たち日本人にとって、最高の水先案内となる良書で
ある。