クリスマスのポピュラー名曲を4手連弾用にアレンジしたアルバムである。全体に音符はごく少なくシンプルに仕立ててある。平易なアンサンブルながら、出てくる音は驚くほど豊かで、なんともいえぬ温かな余韻が広がって居合わせる人をくつろがせる。冒頭に収載された表題作は「スヌーピーのメリークリスマス」あるいは「チャーリーブラウンのクリスマス」として知られる珠玉の曲。スヌーピーファンもそうでない人も思わず頬をゆるめてしまうアレンジだ。ラテンアメリカを代表するクリスマスソング「フェリス・ナビダ」のサンバテイストも印象的。ザ・ビーチ・ボーイズのクリスマスロック「リトル・セイント・ニック」が入っているのもうれしい。「ホワイト・クリスマス」で2ページの前奏ののち、息づまるようなデリカシーをもってメロディが歌われ始める瞬間がアルバムの白眉。この曲のよさをあらためて知らしめる名アレンジといってよい。そして、このアルバムが本当にすごいのは「ホワイト・クリスマス」のB面で発表された「クリスマスを我が家で」が収載されている所だ。遠くにいる家族へ、万感の思いがあふれ出す。故郷を持つ者にはたまらない名ナンバーだ。全くもって、一年のうちで一ヶ月ほどの間しか弾くことができないのがもったいないようなアルバムだが、その特別の贅沢さこそがクリスマスを彩る音楽の価値をいっそう高めるのだろう。
第1曲 Christmas Time Is Here クリスマス・タイム・イズ・ヒア。作詞作曲リー・メンデルソン、ビンス・ガラルディ。Rather slowly 3/4 変ホ長調。
第2曲 Here Comes Santa Claus サンタクロースがやってくる。作詞作曲ジーン・オートリー、オークリー・ホールドマン。Cheerfully 2/2 ト長調。
第3曲 I'll Be Home For Christmas クリスマスを我が家で。作詞キム・ギャノン、作曲ウォルター・ケント。Moderately slow 2/2 ハ長調
第4曲 Feliz Navidad フェリス・ナビダ。作詞作曲ホセ・フェリシアーノ。Moderate Latin beat 4/4 変ロ長調。
第5曲 Little Saint Nick リトル・セイント・ニック。作詞作曲ブライアン・ウィルソン、マイク・ラヴ。Moderately fast 4/4 ト長調。
第6曲 White Christmas ホワイト・クリスマス。作詞作曲アーヴィング・バーリン。Somewhat slowly 4/4 ヘ長調。