モンポウ :橋

Mompou, Federico:El pont

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:★ 種々の作品 ★
総演奏時間:6分00秒

解説 (1)

執筆者 : 内藤 晃 (849文字)

更新日:2018年3月12日
[開く]

1941-47年作曲。Andante、6/8拍子。変ロ短調。生前未出版。 「私たちの初めての散歩の思い出に」と記し、のちに妻となる(1957)恋人のピアニスト、カルメン・ブラーボに捧げられた。舞台はバルセロナのムンジュイックの橋だ。当初この作品を《風景(Paisajes)》の第2曲に入れる予定だったが、「過度にメロディックでロマンティック」であるとして、〈湖 (El Lago)」に差し替えてお蔵入りさせてしまった。月日を経て1976年、同郷のチェリスト、パブロ・カザルスの生誕100年に際し、スペイン文部科学省の委嘱作品として、モンポウは《橋 (El Pont)》(チェロとピアノのための)を発表。チェロの作品として日の目を見た。  A-B-A’の三部形式だが、展開部Bはピアノ版とチェロ版で異なり、チェロ版では前奏も加筆されているなど様々な相違がある。愛する人との初デートの追憶の音楽。長らくお蔵入りさせていたものの、個人的には愛着があったに違いない。  ショパンのノクターンを思わせるロマンティックな趣は、印象派的な静謐さの際立つモンポウ作品の中でも異色。哀愁を帯びた旋律が切々と歌われ、きわめてストレートに心の琴線に触れてくる。16分音符のアルペジオは細やかに上下し、繊細な音模様を織りなしてゆく。主部Aの後半、主旋律が高揚とともにオクターブのユニゾンで歌われ、内声部にしみじみとした、ため息音型の対旋律が現れるが、これはチェロ版ではすすり泣くようなフラジオレットが印象的な対話を聴かせる場面であり、後続の展開部(ピアノ版)を導く伏線となる。音楽は束の間の静寂を経て、ため息音型を含む短い下降旋律の動機が断片的に反復されたのち、途切れ途切れの上行アルペジオが絶え間ない流れへと発展し、内省的な展開部を形成してゆく。再現部A’では短縮がみられ、主要主題が反復されずに一瞬下属調(変ホ短調)を経由するが、この転調(F→D♭7/A♭→B♭7/F→E♭m)は実に感動的で印象深い瞬間となっている。

執筆者: 内藤 晃

楽譜 (0件)