No. 1 Allegro ハ長調
アルペッジョと歌唱的な旋律の練習曲。ニオクターヴに渡る急速なアルペッジョは順次左右の手に現れる。当時のピアノは高音が持続しにくかったため、中音域に優美な旋律を置くことが好まれた。
No. 2 Presto non troppo ニ短調
急速な和音連打の練習曲。絶えざる16分音符のリズムは蒸気エンジンのような機械的運動を思わせる。発展しつつある産業化社会を象徴するかのような一曲。
No. 3 Presto ハ長調
分散和音と重音の練習曲。左手は大きく跳躍する伴奏音型を奏する。旋律は常に中音域に置かれ、巧みな転調によって次々に色調が変化する。
No. 4 Lento ヘ長調
重音と同音連打の練習曲。右手は最上声部の旋律とそれに寄り添う同音連打の副旋律を同時に奏でる。
No. 5 Allegretto con grazia ニ短調
跳躍の練習曲。手のひらを返すようにして1拍の内に1オクターヴ以上の音域を打ち鳴らす。順次両手に同じ音型が現れる。
No. 6 Allegro quasi presto ロ長調
付点リズムで和音を奏でる練習曲。中間部はト長調に転調する。曲全体は和音のみで構成されるが、転調によって見事に展開される。多様性に富んだ和声の継起はラヴィーナの卓越した創意とそれを支える確固たる理論的基盤を物語っている。
No. 7 Presto non troppo e leggieramente ハ長調
装飾音の練習曲。鈴の様になる愛らしい装飾の後には時折1オクターヴを越える困難な跳躍が現れる。
No. 8 Allegro di bravura ヘ長調
重音を含む分散和音の反復の練習曲。この伴奏音型は左右の手に順次現れ、最後は両手で同じ音型を奏する。
No. 9 Moderato 変ニ長調
両手で並行するアルペッジョを奏でる練習曲。左右対称な手の構造から、ショパンが作品25第1番で示したように分散和音を対称的に配置するほうが演奏は容易だが、ラヴィーナは敢えて同方向に向かうアルペッジョを選んだ。
No. 10 Allegretto agitato 変ロ長調
左手を伸ばしてアルペッジョを奏で、右手で重音を伴う分散和音を弾く練習曲。中間部には変ト長調、イ長調を中心とするより遠い調への逸脱が見られる。
No. 11 Moderato 変ホ長調
急速に手を交差させる練習曲。旋律は一音おきに左右の手で交互に奏される。愛らしい旋律の割に正確に音を当てるための技術と集中力が要求される。
No. 12 Allegro moderato 変イ長調
右手の重音を伴う三連符と左手の跳躍、重音の練習曲。一定のリズムパターンによって約10種類の旋律パターンが転調しながら次々に現れる。