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カバレフスキー : 4つのロンド 第4曲 ロンド=トッカータ Op.60

Kabalevsky, Dimitri : 4 Rondos 4. Rondo-Toccata Op.60

作品概要

楽曲ID: 57298
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ロンド
総演奏時間:1分10秒
著作権:保護期間中
ピティナ・コンペ課題曲2025:C級

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:応用5 応用6 応用7 発展1

楽譜情報:3件

解説 (1)

演奏のヒント : 手嶋 沙織 (1147 文字)

更新日:2025年7月12日
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アレグロ・スケルツァンドの表示を見て、速く弾かなければならないと思った奏者もいるでしょう。

しかし、この曲はべらぼうに速く弾くのではなく、あくまでも『2拍子』を感じられる速さで弾くべきです。

この曲の魅力は絶え間なく動いているということ。息つく暇もありませんが、そのお陰で切羽詰まるような緊張感を表現することが可能なのです。緊張感を表現するにはまず拍の取り方です。縦のりで強拍を重く感じるのでなく、上方向に拍を感じます。(胃をキュッと上に上げるように拍を感じる)。左手の分散和音のタッチコントロールが難しいですが、和音で弾いた時の指の位置で、指先は細い針が指先をつついてくるような感覚、手首の下を完全に脱力した状態で弾きましょう。そして左手の分散和音は汽車の車輪が絶え間なく回っている様子を想像して弾くと良いでしょう。カバレフスキーと同年代のロシア作曲家スヴィリードフのオーケストラのための組曲「時よ、前進」が参考になります。
この作品を演奏するにあたってロンド形式(ABACA)をはっきりと理解しておくことが大切です。

A部分の1・3小節目上行音形は同じ音ですが、行き着く先のミの高さが違うことを意識して弾き、3小節目は少し陰りのある音を意識すると1小節目との表情の変化を表現することができます。12小節目では、右手がDis、左手がFisへと音が変わり、曲の様子も怖い響きになるので、音色の工夫が欲しいところです。

A部分はスタッカートのため歯切れよく演奏しますが、テクニックに囚われてフレーズ感を失ってしまいがちです。練習時には敢えてレガートで歌唱的に弾いてみましょう。

B部分はリズムを刻んでいる右手のラの音が重くなりすぎないように、親指の付け根の力を抜いて弾きます。20・24小節目の上行音形ではクレッシェンドしていき緊張感を高めます。25小節目からの3回のゼクエンツも表現を変えていきますが、3回目はテヌートを感じて31小節目に向けてたたみ掛けて弾きます。

各セクション終わりには休符が必ずありますので、緊張感をもって次のセクションへ移り変わります。

C部分はB部分と違い上行形ユニゾンで音楽が展開していきます。細かいアーティキュレーションに気をつけて半音の移り変わりを楽しんで弾きましょう。

最後のA部分はクライマックスに向かってこれまで以上に緊張感のある切羽詰まった音が必要です(但し焦らないように)。79小節目から最後までは音の重なりを感じながら重さのある音で弾き終わりましょう。

ロシア音楽を弾く時、往々にして格好いいフレーズやフォルテになった途端、暴力的に鍵盤を弾いてしまいます。この作品でもフォルテが出てきますが、「大きく・強く」ではなく、ピアノから鳴っている響きの厚みを感じて弾きましょう。

執筆者: 手嶋 沙織

楽譜

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