メンデルスゾーン :ピアノ三重奏曲 第2番 第4楽章 Op.66 Q 33

Mendelssohn, Felix:Klaviertrio Nr.2  Finale. Allegro appassionato

作品概要

楽曲ID:38071
楽器編成:室内楽 
ジャンル:種々の作品
総演奏時間:8分20秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

解説 : 丸山 瑶子 (799文字)

更新日:2023年12月19日
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この楽章で特に注目されるのはバッハの讃美歌 “Gelobet seist du Jesu Christ”, “Herr Gott dich alle loben wir”が引用されている点であり、バッハと同じくライプツィヒで活動したメンデルスゾーンがバッハに対して深い関心を寄せていたことがよく分かる。

形式を考えたとき、セクション同士を繋ぐ移行部に楽章冒頭の主題旋律ないしその断片が用いられているのでロンド形式のような印象を受ける。しかし同時に、前半では2番目の主題が変ホ長調、コラール主題が変イ長調で現れたのに対し、後半ではそれぞれ楽章の主調ハ短調とその同主長調ハ長調になる点がソナタ形式における副主題の調の扱いと通じる(「自由なソナタ形式」とされることもある)。だが強いて言えば展開部に当たる部分は主題旋律による模倣が短く行われる程度で、主調による主題の完全な再現もないため、既存の典型に無理に押し込める意味はあるだろうかと疑問も生じる。

6/8拍子で舞曲を連想させる印象的な主要主題は、上述した移行セクションだけではなく他の主題の対旋律としても現れ、楽章全体に統一性を与えている。一方、はじめに変ホ長調で現れる主題旋律については、その分散和音の音形に第1楽章の主題との共通性が指摘されている。

動機の変容だけではなく響きの変化も豊かで、その幅は薄く室内楽的なテクスチュアから、ピアノのオクターヴや弦楽器の重音を駆使した重厚なテクスチュアまで実に広い。楽章の中でも最も迫力のある響きを与えられているのは終盤のコラールだろう。ここでは三つの楽器が広範な音域をカヴァーし、トレモロや3〜4弦にまたがる重音が用いられ堂々とコラールが奏でられる。短調の音楽が続いてきたところで終盤に長調のコラール風の主題が荘厳たる趣で現れるのは、メンデルスゾーンの前奏曲とフーガop. 35にも見られる展開である。

執筆者: 丸山 瑶子
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