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ショパン :ワルツ(19曲) 第11番 Op.70-1 CT217 変ト長調

Chopin, Frederic:19 waltzes Valse No.11 Ges-Dur Op.70-1 CT217

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ワルツ
総演奏時間:1分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
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解説 (2)

解説 : 安川 智子 (1241文字)

更新日:2019年1月31日
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《円舞曲 Valse》 変ト長調 作品 70-1 没後出版

【作品の基本情報】

作曲年:1832 出版年:1855 (Paris, Berlin)

【楽譜所収情報】

パデレフスキ版:No.11(フォンタナ版)/エキエル版:(WN42) [B]-6a番, [B]-6b番, [B]-6c番/コルトー版:No.11/ヘンレ版:No.11a [自筆譜に基づく] , No.11b [フォンタナ版] /ペータース版(原典版):(No.14a [1832年の自筆譜に基づく] , No.14b[1833年の自筆譜に基づく])

2種の自筆譜と、初版に用いられたフォンタナによる改訂版(1835年前後の自筆譜が存在したとも考えられる)の3種類の楽譜がある。「パリ、8/8,[18]32」と記された自筆譜がもっとも初期のものと考えられる。もうひとつの自筆譜には1833年という日付が書き込まれている。3種の楽譜はリズムの面でそれぞれ大きく異なる。とりわけ自筆譜では、冒頭のアウフタクトの付点リズムが特徴的であるが、フォンタナ版では、すべて8分音符の連なりに変更されている。また、1833年の自筆譜が、付点のリズムを多用しているのに対して、1832年の自筆譜では16分休符を挟んだ、より歯切れのよい付点リズムを多く用いている。これはマズルカに特徴的なリズムであり、おそらく最初はマズルカ的感覚でこのワルツを書いていたのであろう。演奏の難しさもあって、次第にただの付点リズムから、8分音符へと姿を変えたものと思われる。ただし死後に出版されたフォンタナ版にショパンの意図がどれくらい組み込まれているかは不明である。

1832年8月といえば、ショパンがパリでの演奏会デビュー(2月26日)を終えて、金銭的にはまだ厳しい状態の頃、パリでの基盤を作ろうと四苦八苦していた時期である。この後、ショパンはロスチャイルド男爵のサロンに招きを受け、夫人や令嬢のピアノのレッスンを受けたことから、上流階級でのピアノ講師として生活基盤が作られていくこととなる。複数の自筆譜の存在は、サロンや社交界に頻繁に出入りをするようになったショパンが、ワルツというジャンルに、そこで得た体験を反映させつつ試行錯誤している過程でもある。

構造は8小節単位の楽想が4つ、繰り返しを含みながら、A-a-B-b-B-Aとつながっていく。聞かせどころである中間部Bは、1832年の自筆譜では、16分休符を含む軽やかなスキップのリズムであったものが、フォンタナ版ではすべてなめらかな付点リズムへと変わっている。「Meno mosso(速度を落として)」「cantabile(歌うように)」などの曲想指示も加えられ、優雅な舞踊へと様変わりしている。こうした過程が、その後《ワルツ》作品18の作曲にも生かされたのであろう。パリで初めて出版された《ワルツ》作品18によって、ショパンの社交界での地位は決定的となったのである。       (2010.2. 安川智子)

執筆者: 安川 智子

解説 : 齊藤 紀子 (208文字)

更新日:2019年1月31日
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