作品概要
解説 (2)
解説 : 安川 智子
(861 文字)
更新日:2019年1月9日
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解説 : 安川 智子 (861 文字)
《円舞曲 Valse》 変イ長調 作品64-3
【作品の基本情報】
作曲年:1846~47 出版年:1847 (Paris, Leipzig)
献呈 :カテリーナ・ブラニツカ A Mademoiselle la Comtesse Catherine Branicka
【楽譜所収情報】
パデレフスキ版:No.8/エキエル版:No.8/コルトー版:No. 8/ヘンレ版:No. 8/
ペータース版(原典版):(No. 8)
変イ長調という調性は、この《3つのワルツ》作品64をひとまとまりと考える上で、最適の選択であるように思える。作品64-1と64-2がそれぞれ、属音にあたる共通音(変イと嬰ト)から始まることはすでに述べたが(作品64-2参照)、印象的なこの音が作品64-3の主音となることで、調性上の統一感が生まれる。長く引き延ばされた変イ音で終わる作品64-3の後にふたたび他の曲へと戻れば、文字通り際限のない円舞としても成り立つ。
モデラートの一見穏やかな主題で始まるが、半音階を駆使して自在に転調を繰り返し、トリルを挟んで中間部へと続く移行部は怒りにも似た激しさを見せる。しかしそれも束の間であり、73小節目から始まるハ長調の中間部では、旋律を左手に託してまた穏やかに始まり、転調を繰り返して再現部へと至る。この中間部は、左手の旋律がチェロの響きを想起させ、右手の多声的な構造と合わせて室内楽を連想させる。ショパンには、オーギュスト=ジョゼフ・フランコム(1808-1884)というチェリストの友人がおり、同時期に出版された《チェロ・ソナタ》作品65をフランコムに捧げている。1848年のパリ最後のコンサートでも同作品をフランコムと共演していることからも、どこかしら間接的な影響を受けたのかもしれない。最後はアッチェレランドでだんだんと速度を速め、クレシェンド、ディミヌエンドを波打ちのように繰り返しながら、低音の変イ音へ向けて一息になだれ込んで終わる。 (2010年2月 安川智子 ※2014年7月改訂)
解説 : 齊藤 紀子
(219 文字)
更新日:2019年6月25日
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解説 : 齊藤 紀子 (219 文字)
変イ長調、モデラートは、カトリーヌ・ブラニツカ伯爵令嬢に捧げられた。小節をまたぐタイが特徴的である。3部形式で書かれているが、ワルツとしては、様々な調が用いられていることもまた特徴的である。中間部では左手に旋律が現れる。このワルツの主要テーマを再現するためにこの中間部の終わりで用いられる半音階的な和声は、いかにもショパンらしい手法である。ワルツ全体の最後は、5オクターヴの音域内を駆け上がり、それから駆け下りることにより締めくくられる。
楽譜
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