作品概要
解説 (1)
解説 : 樋口 晃子
(1152 文字)
更新日:2019年2月9日
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解説 : 樋口 晃子 (1152 文字)
Duex nocturnes op. 37
この2曲のノクターンは1838年から39年にかけて作曲され、初版はパリ(Troupenas, 1840)、ライプツィヒ(Breitkopf und Hartel, 1840)、ロンドン(Wessel, 1840)で出版された。献呈者の記載はない。この2曲は、当時人気女流作家であり、ショパンと恋仲にあったジョルジュ・サンドと共に行ったマヨルカ島への船旅の前後に作曲されたと考えられている。この経験と本作との関連は不確かであるものの、第2番には舟歌風のセクションが現れる。
No. 2 ト長調
このノクターンにはA, B, A’, B’, A’’, Codaというロンド風の形式を認めることができる。但し、全体を通して、転調が極めて頻繁に行われ主調のト長調がほとんど現れないのが特徴的である。例えば、Aでは、mm. 1-3、mm. 6-7とmm. 21-22にかけて一瞬ト長調が現れるのみである。
Aでは大きい跳躍音程を含む左手の分散和音の伴奏音型にのって奏でられる、3度や6度といった重音からなる右手の主題が特徴的である。主題がこのように冒頭から重音で提示されるノクターンは、21曲中このノクターンだけである。これら3度や6度の急速な連続は煌びやかな音響効果をもたらすと同時に、この曲にエチュード的な側面も付与している。
対照的にBでは、符点2分音符の左手に支えられ、飾り気のない素朴なバルカロール風の主題が奏でられる。主題のアウトラインはパターン化されているが、A同様、次々と自由に転調を繰り返し、ここではA以上にト長調の響きは聞こえてこない。その転調経過をたどってみると、ハ長調(m. 28-)、ホ長調(m. 36-)、嬰ハ長調(瞬間的だがm. 45)、嬰へ短調(m. 46-)、変イ短調(m. 48-)、ヘ長調(m. 51-)、変ロ長調(m. 53-)、ニ長調(m. 60-)、そしてようやくト長調(m. 66-)に到達する。ハ長調からホ長調、変ロ長調からニ長調へという長3度上の調への3度近親転調は、ショパンが好んで用いた転調である。
これに続く、A’(A’’も同様)はAの縮小形であり、B’はBと同じ長さだが、転調経過が異なる。A’には半音階進行するバスによって期待されるカデンツが次々に裏切られ、とりとめのない雰囲気を助長される(mm.81-85)。このB’には、嬰ト長調(m. 91-97)や嬰イ短調(m. 98-102)というト長調からかなり遠い調も含まれている。m. 132のフェルマータの後のコーダにおいて、Bでは主題として一度も現れることのなかったト長調でBの主題の一部が奏でられた後、最後にト長調のV- I の和声進行をpppで響かせ、曲を終える。
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