作品概要
解説 (1)
解説 : 樋口 晃子
(954 文字)
更新日:2019年2月9日
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解説 : 樋口 晃子 (954 文字)
Duex nocturnes op. 37
この2曲のノクターンは1838年から39年にかけて作曲され、初版はパリ(Troupenas, 1840)、ライプツィヒ(Breitkopf und Hartel, 1840)、ロンドン(Wessel, 1840)で出版された。献呈者の記載はない。この2曲は、当時人気女流作家であり、ショパンと恋仲にあったジョルジュ・サンドと共に行ったマヨルカ島への船旅の前後に作曲されたと考えられている。この経験と本作との関連は不確かであるものの、第2番には舟歌風のセクションが現れる。
No. 1 ト短調
このノクターンも、複縦線で仕切られた3部形式(A, B, A’)からなる。
絶えず緩やかなマーチ風のリズムで歩みを進める左手の伴奏音型にのって、声楽のベル・カント様式を想起させる装飾が施され、物憂げな主題(mm. 1-8)が右手で奏でられる。この主題はAで3回現れるが、反復ごとに前打音やフィオリトゥオーラが加えられたり(m. 18, 19やm. 36 etc.)強弱に変化が付けられたりする(1回目p-f、2回目f-ff、3回目p)。ここにはショパンの初期ノクターン以来意識して行っていた「同語反復」回避の旋律書法が顕著に認められる。Aで注目すべきは、6小節目に見られる3-3-3-3という指使いである。連続する複数の音符に対して同じ指を連続的に使用することは一般的ではないが、ここでは三連符と4分音符の各音が、均質というよりは幾分粗野な仕方で際立たたせられることが示唆されている。
変ホ長調のBでは終始一貫して、温かく豊かな響きの4声体コラールが奏される。ノクターンへのコラールの導入は既に第6番(1833)に見られるもので、旋律的なAと好対照をなし、宗教的な厳粛さをいっそう強めている。後半には印象的なフェルマータが4度挿入され、これによってコラールの終結が予示される。
主題が再現するA’はこのノクターンの場合、Aが大幅に縮小される以外、ほとんど変化は見られない。曲の結尾はト短調の同主調であるト長調のIV(c-e-gの和音)による変格終止に続くト長調の主和音で終わる。ショパンのノクターンにあってはこのようにピカルディ終止や変格終止、またはその両方を用いる曲は典型的である。
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