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ホルスト :木星

Holst, Gustav:Jupiter, the Bringer of Jollity

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:リダクション/アレンジメント

解説 (1)

執筆者 : 小林 由希絵 (1675文字)

更新日:2018年3月12日
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〈木星〉は、イギリスの作曲家グスタフ・ホルストの代表曲である組曲〈惑星〉の中の一曲。 1914年から16年の間に2台のピアノのために書かれ、1917年から大規模な管弦楽曲への編曲に着手。1918年から非公式の試演会を重ね、1920年に正式に初演された。この曲が収められている〈惑星〉は、惑星の名前とそれに付随した副題のついた7つの楽章からなる組曲。  ホルストは作曲当時、占星術に傾倒しており、この組曲は天文学というよりは占星術の神秘性からインスピレーションを受けて作曲されている。しかしながら、占星術からヒントを得ているものの、ホルスト自身はこの曲を標題音楽ではないとしており、「各自の副題にイメージを膨らませて自由にイメージを膨らませて、自由に聴いてほしい」と語っている。なお、〈木星〉には「快楽をもたらす者(The Bringer of Jollity)」という副題が付けられている。  原題の「Jollity」とは「陽気で快活なユーモアに富んだ感情」という意味で、日本語訳の「快楽」とはやや異なる。ホルストはこの曲について「国民的行事や宗教的祝典に結びつくような儀礼的な喜びを表現している」と解説している。  1920年に初演された組曲〈惑星〉は大成功をおさめ、ホルストの名は一躍有名となった。しかし、しばらくするとこの曲の人気も落ち着き、1950年代にはイギリスの一作曲家の佳作と見なされるようになっていた。再びこの曲に脚光が当てられるようになったのには、20世紀を代表する指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンの存在が大きい。カラヤンは、1961年頃から〈惑星〉をウィーンフィルで積極的に演奏し、この曲の知名度を上げ、組曲〈惑星〉は人気クラシック曲の仲間入りを果たすこととなった。  続いて、楽曲の構成について見てみよう。 アレグロ・ジョコーソ、ハ長調、4分の2拍子、3部形式。 第1部はハ長調ではじまり、細かい刻みのパッセージに勇壮なファンファーレの第1主題が鳴り響く。経過句をはさみ、リズミカルで躍動的な第2主題、3拍子で民族舞曲的な第3主題へと続いてゆく。 第2部のトリオの部分になると、変ホ長調へと転調し、組曲〈惑星〉の中でも最も有名なメロディが登場する。このメロディは、昔懐かしい民謡のような親しみやすさと雄大さに満ちている。 第3部になると、第1部の3つの主題が幾度も転調を繰り返しながら展開され、回想しながら音楽を彩っていく。最後はフォルテッシモの力強いコーダへと導かれ、華やかに幕を閉じる。  独特な和音の重ね方や、色彩感豊かなオーケストレーションなど随所にホルストらしさが光っている。また、ホルストが研究していた民族音楽へのアプローチや、通常4本編成のホルンを6本に増強するなど、実験的な音楽への試みもされているが、20世紀の音楽の中でも比較的聴きやすい作品となっている。  中でも中間部のトリオのアンダンテ・マエストーソのメロディは美しく、ホルスト自身の手によって管弦楽付きコラール曲にも編曲されている。歌詞はイギリス人外交官セシル・スプリング=ライスによるもの。作詞・作曲ともにこの曲が書かれたのは、ヨーロッパ中を戦火の渦に巻き込んだ第1次世界大戦中のことであり、歌詞の1番は祖国への忠誠、2番は平和な理想の国について書かれている。 こうして戦争で犠牲になった人々への平和の祈りが込められたこの曲は、〈I Vow Thee,My Country(祖国よ、我は汝に誓う)〉という曲名で、イギリス国民から広く愛される曲となり、王室行事や戦没者追悼式典などでも歌われるようになった。 またこの曲は、ホルストの王立音楽院時代からの友人ヴォーン・ウィリアムズが1926年に監修した讃美歌集「Songs of Praise」にも〈サクステッド〉という曲名で収められている。    この曲は第1次世界大戦という悲惨な戦争の時代に出来た楽曲だが、だからこそ戦争のない平和な世界の実現の難しさと大切さを、今なお多くの人々に伝え続けている。

執筆者: 小林 由希絵
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