フランクのピアノ三重奏曲は、34年に「作品6」として書かれた1曲の習作の他に、1839年から42年にかけて作曲された4つの三重奏曲、《3つの協奏的三重奏曲》作品1(1843刊)及び作品1の第3番の終楽章を単独で出版した《協奏的三重奏曲 第4番》作品2(同年刊)が存在する。1843年の春に出版された作品1の3曲は、フランクがパリ音楽院での学業を中断してベルギーに戻り、ピアニスト兼作曲家として活動するようになる頃の作。当時のベルギー国王レオポルトⅠ世に献呈された作品1は、嬰へ短調の第1番、フランク自身が付けた〈サロン用トリオ〉の名で知られる変ロ長調の第2番、ロ短調の第3番の3曲から成っている。今日では、第1番が最も広く知られている。
第1番は3楽章形式で、全楽章にわたって第1楽章の主題やモチーフが登場する循環形式の手法で書かれており、後にフランクが発展させる作曲手法の萌芽を見て取ることができる。第2楽章の2つの中間部は、第1楽章の主題素材によって展開されており、続く第3楽章では、第1楽章の主題が展開部とコーダで再現され、全楽章の統一が図られている。