土田 英介 :ピアノ・ソナタ (1988-1991, 2006-2007, 2008)
Tsuchida, Eisuke:Piano Sonata
執筆者 : 土田 英介 (748文字)
演奏時間約40分、過去に類を見ないピアノの鳴り方を追求したピアノ・ソナタである。
1988年11月、このソナタの発想を得た。同年5月、第14回民音現代作曲音楽祭に於いて「交響的譚詩」を発表した私は、その後、虚無感に襲われ、全く一音すら定着することができなくなった。そのような中、父親代わりであった祖父が亡くなり、徹夜で蝋燭番をしていた時のことであるが、数々のピアノの旋律、音響が内面から突き上げてきて、このソナタの作曲を決意せざるを得なくなったのである。書き溜めた膨大なスケッチの整理に2年余りを費やし、1,2楽章は未整理のまま1991年に3,4楽章を完成させた。その後15年間放置していたが、2006年の冬から1,2楽章の改訂と整理を行った。しかし、結局当時のエネルギーと感性を残しながら纏めていくに過ぎなかった。
全体は4つの楽章から出来ているが、多数の主題の提示と様々なピアニズムの葛藤から絶叫へと向かう1楽章、緩徐楽章的なテーマより開始されるが1楽章と同じ壁にぶつかり乱れた後、郷愁とともに浄化される2楽章。3楽章では、それまでに出てきた多数のテーマを一つの盛り上がりの中で巡っていくが、行き着く先は1楽章冒頭の音型である。そして、再度、能動的に意思をぶつけ、全てを圧倒するトッカータの終楽章へと繋がっていく。終楽章では、2楽章最後に歌われた旋律とともにピークを向かえ、その後、孤独なコーダとともに終結する。
このソナタは、現在の私を支える最も重要な作品の一つであり、長大且つ難曲極まりない。発想から約18年半の長い歳月を経て、2007年4月、泊真美子により初演され、今回の録音に至った。既成のピアノ曲にはない独特のピアニズム、そして私自身の心からの「うた」がこの上なく表出された演奏に思える。
第1楽章
総演奏時間:12分30秒
動画1
解説0
楽譜0
編曲0
第2楽章
総演奏時間:12分00秒
第3楽章
総演奏時間:6分00秒
第4楽章―コーダ
動画0
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