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ショパン :2つのノクターン (第9・10番) Op.32 CT116-117

Chopin, Frederic:2 nocturnes (H;As;) Op.32 CT116-117

作品概要

作曲年:1836年 
出版年:1837年 
初出版社:Berlin, Paris, London
献呈先:Baronne de Billing née de Courbonne
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ノクターン
総演奏時間:8分30秒

解説 (1)

執筆者 : 樋口 晃子 (1458文字)

更新日:2010年1月1日
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Deux nocturnes op. 32

この2曲のノクターンは1837年に作曲され、初版はパリ(M. Schlesinger, 1837)、ベルリン(A. M. Schlesinger, 1838)、ロンドン(Wessel, 1837)で出版された。

No. 1 ロ長調

このノクターンは他の多くのノクターンとは違って、三部形式をとっておらず、全体の図式は以下のよう示される。

ショパンが2部形式、3部形式、ロンド形式以外で作曲したのは、このノクターンが初めてである。

主題Aは6小節目終わりのフェルマータの挿入によって、考え込むような一瞬の休止が生み出される。フェルマータの前後に配置されたgis(第6小節の右手)とg(第7小節左手)は、和声学においては回避されるべきとされる対斜関係をなしているが、ショパンは旋律の中断を際立たせるためにあえてこのような和声進行を選んでいる。この休止はCにも現れ、何度も繰り返されるので、この曲を強く印象づけるのに一役買っている(譜例1)。

譜例1 第5~7小節

Bでは旋律が右手、左手(音符の旗が上付きに成っている声部)に追加され3声部のポリフォニーを形成する。A’はAと大きな変化はないが、第16小節にはより細分された装飾が施されている。以下、B’、B’’、C’はそれぞれB、Cにわずかに装飾が加えられた変化形である。

第62小節からは、曲想が一変し、不気味な低音連打とレチタティーヴォ風の音型に特徴づけられる劇的なコーダにはいる。第61小節のロ長調のⅤ度は主和音(h-dis-fis)に解決するのではなく、ト長調の属七の第三転回形へと進み、同主調のロ短調へ移る。ショパンのノクターンにおいて、短調の曲が同主長調で終わるという手法はよく用いられるが、このノクターンのように、長調(ロ長調)の曲が同主短調(ロ短調)で終わるという逆のパターンは珍しい。

No. 2 変イ長調

第1番の例外的な形式に対し、このノクターンは簡潔な3部形式(A, B, A’)からなる。それに加えて、Aを導く序奏と、A’の後に終結部(曲尾の二小節)がついているが、この序奏と終結部はコラール風の全く同じ2小節である。レントの速度指示があるものの、ショパンのノクターン中、とりわけ明るく軽快、かつ感傷的な作品である。

Aの主題は、夕暮れ時、ギターやマンドリンなどを片手に窓辺で歌われるセレナードの雰囲気をまとっている。実際、素朴な歌をささえる伴奏は軽快なギターのつまびきを思わせる。主題は、A中で何度も繰り返されるが、その音域や音型は、ソプラノ歌手のためのオペラ・アリアに非常によく似ている。

中間部Bの主題はAの主題から派生しているが、Aとはきわめて対照的な曲想である。Bに入って、調性は平行調のへ短調に、拍子は4/4拍子12/8拍子に変化し、両手が8分音符単位で同一のリズムで和音を刻む。第35小節からは音の層と動きが増し、右手の半音階的進行とあいまって情熱的な高まりを見せる。第39小節からは第27~38小節を半音上の嬰へ短調で繰り返し、この半音上への転調によって、中間部Bはより一層激しさを増しffに達するが、その後もクレッシェンドを続ける。

A’ではAがそっくりそのまま回帰するが、中間部Bの激しさを引き継ぐかのように「情熱的に」Appassionatoという指示のもと、ffで主題が戻ってくる。そして、終結部へと向かう第71小節からの非和声音を含む5連符の揺れによって、ようやく激しさが緩和され、静かに曲を閉じる。

執筆者: 樋口 晃子

楽章等 (2)

第9番 Op.32-1 CT116

調:ロ長調  総演奏時間:4分00秒 

第10番 Op.32-2 CT117

調:変イ長調  総演奏時間:4分30秒 

楽譜

楽譜一覧 (19)

その他特記事項
ノクターン番号はパデレフスキ版による。