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サン=サーンス :動物の謝肉祭(2台ピアノ) 序奏と堂々たるライオンの行進

Saint-Saëns, Camille:Le carnaval des animaux "Introduction et marche royale du lion"

作品概要

楽曲ID:24064
楽器編成:ピアノ合奏曲 
ジャンル:種々の作品
総演奏時間:2分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

解説 : 中西 充弥 (812文字)

更新日:2019年1月6日
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ライオンは百獣の王であるから、「ロイヤル・マーチ」であり、堂々として威厳のあるメロディーが弦楽器のユニゾンで、次いで第一ピアノの両手のユニゾンで奏でられる。伴奏に第三音を欠く空虚五度の和声持続音(と言っても、ピアノでは音を長く保持できないので、代わりに和音の連打)が見出だされるが、このユニゾンのメロディーとそれを支える空虚五度の持続音というコンビは、すでに歌劇《サムソンとダリラ》中の有名なバレエ〈バッカナール〉中にも見出される、サン=サーンスの「オリエント」様式のひな形なのである。何てステレオタイプで紋切型な、と誹りも受けるかもしれないし、また当時は植民地時代であったので、「上から目線だ」と批判されがちなのであるが、作曲家本人は頻繁に外国旅行し、異国の文化も積極的に学ぼうとしていたので、どちらかというと、当時の聴衆の知識レベルに合わせたと言った方が良いであろう。なぜなら、サン=サーンスがいくら世界中で実際に各地の音楽を聞き、研究をしてその成果を自作の中で披瀝しても、聴衆の知識、教養が追い付かなければ、それとは認識してもらえないからである。例えば、19世紀末パリでは日本趣味が流行するが、美術の分野では実際にモノが輸入され、オリジナルを手に取ってみることができるのに対し、レコードもない時代、異国の音楽を手軽に聴くことは大変難しく、当時の人々の認識もまだ低かったことを考慮頂きたい。ちなみに、ここでいう「オリエント」とはフランスから見ての「東洋」であり、ギリシャ・ローマ(の古典文化)も既にフランスにとって「東」であり、当時流行したスペイン趣味にしても、イスラム文化の残り香を伝えるという意味で当時のオリエンタリスムの一翼を担っていた。ライオンと言えばアフリカであるが、アフリカも当時のフランス人にとって「オリエント」であり、この雑駁な一括りも、ヒト・モノの交流が困難な時代の小さな世界観を反映しているのである。

執筆者: 中西 充弥