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ショパン :ノクターン第18番 ホ長調 Op.62-2

Chopin, Frederic:Nocturne No.18 E-Dur Op.62-2

作品概要

楽曲ID:23157
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ノクターン
総演奏時間:5分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:展開1 展開2 展開3

楽譜情報:13件
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解説 (1)

解説 : 上田 泰史  (1104文字)

更新日:2010年1月1日
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Deux Nocturnes Op.62

この二曲は1846年に作曲され、初版はパリ(Brandus, 1846)、ライプツィヒ(Breitkopf und Härtel, 1846)、ロンドン(Wessel, 1846)で出版された。彼の弟子と思われるR. フォン・ハイゲンドルフ=ケンネリッツ嬢に献呈。ショパンが生前に出版したノクターンとしては最後のものである。作品55の二曲に比べ、書法はますますポリフォニクになり、半音階によるうねりは消えて響きは透明度を増す。ここに至って、彼は常に憧れを抱き続けてきたポリフォニックな書法と歌唱的な様式の折り合いをつけ、自分なりの答えを見出したようである。

no.2 ホ長調

第2番の伴奏音型は、以前に作品55-1、作品48-1で使用されたものと同じで、バスと中声部を埋める和音からなる。これによって豊かな幅広い音響が実現されている。形式は他のノクターンと同じく3部形式による。

このノクターンは二つの特徴的な和声進行によって枠づけられている。冒頭小節における二拍目の経過的な和音はVI度(e-gis-cis)であり、それは直ちに三拍目でI度([e]-h-gis)に解決する。この二拍目の和音が冒頭、しかもLentoという遅いテンポで用いられると、フランス近代の響きを想起させる。この冒頭の進行は、最後の小節のカデンツにも聴くことができ、意図的に使用されているように思われる。

第32小節まで続く主題部(以下A)は、第1番のようなポリフォニーは見られないが、第25小節目で主題が反復されるときに見られる右手の華麗な装飾音型は、第1番との共通点である。

続く中間部(第32~57小節)の開始は、右手が波打つような音型で始まる。こうした左手の扱いは、《12の練習曲》作品10-12カルクブレンナーの練習曲にみられるように、30年代前後から先駆的なピアニストたちによって用いられた左手訓練のための書法である。むろん、ショパンはこうしたテクニックを左手の訓練というよりは、Aにおいて確立された雰囲気に変化をもたらし、ドラマ性を生み出すために使用しいているのである。中間部の最も重要な特徴は続く40小節に始まるセクションに見られる声部間の模倣である。それは第42、49、51小節に現れる。いずれの小節でも最上声部におかれた第1、2拍目のモチーフがバス声部の第2、3拍目で模倣される。

主題は57小節で回帰し、一度だけ姿を見せたのち、第32~57小節に見られた左手の音型が現れ、コーダが導かれる。曲尾の三小節のカデンツの最上声のモチーフは、第40小節第1拍目から展開される動機の変形である。

執筆者: 上田 泰史