チャイコフスキー :子供のアルバム-24のやさしい小品 新しいお人形 Op.39-9 変ロ長調

Tchaikovsky, Pytr Il'ich:Children's Album  "The New Doll" B-Dur Op.39-9

作品概要

楽曲ID:22189
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:1分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:基礎5 応用1 応用2 応用3

楽譜情報:25件

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1500文字)

更新日:2018年3月15日
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この曲は、チャイコフスキーの小曲でありながらも、ピアノコンチェルト第1番の第2楽章を思い起こさせるような曲です。さて、皆さんに左手の伴奏形について考えて頂きたいです。この曲は左手の伴奏が、最後の小節を除き、全て1-2拍目が音符で埋められ、3拍目が休符になっていますね。

もしも僕が作曲家であれば、1拍目を休符、2-3拍目に音符を入れるかもしれないです。試しに、同じ和音を使い、1拍目を休符にして2-3拍目に和音を入れて弾いてみて下さい。如何でしょうか?

劇的な変化は無いものの、3拍目が休符であるのと、1拍目が休符であるのとでは少し気持ちが異なってきますね。1拍目が休符というのは、どちらかというと少しアジタート気味な活気ですが、3拍目が休符というのは、もっと楽しい期待感やわくわくした気持ちの表現と捉えることも可能ですね。ちなにに休符が無いヴァージョンも試して弾いてみましょう。実に味気ない事が分かると思います。

この、1-2拍目に音符が書かれ、3拍目に休符という感情を皆さんはどのようにお考えになりますか?チャイコフスキーの気持ちを察してみましょう。

さて、8小節ずつのフレーズが2つ、17小節目まで続きます。2-9小節間と、10-17小節間は、小節数、音、ダイナミックと全てが全く変わりません。しかしこの2つのフレーズを同じように弾いてはいけません。必ず変化を付けます。例えば、10-17小節間は、2-9小節間よりも若干音量を大きくするといった具合です。

ここまででもう一つ注意する重要なことがあります。それは、17小節目までの右手の8分音符を決して強く弾かないことです。つまりは、4分音符の方を強くします。音型を見てみると、2小節目、メロディーラインはBから始まり、3小節目でC、4小節目でDとあがっていきますね。故に少しずつクレシェンドをかけるのですが、くれぐれも8分音符がその小節内の4分よりも大きくならないようにします。

次にBセクションです。Bセクションは18-33小節間です。それぞれ4小節間のフレーズが4つ、16小節間に及びます。音型的には最初の2つと、後の2つがそれぞれペアになります。例えば18-21、にたいして、22-25が似た音型になります。この、18-21よりも22-25のほうがテンションが高いのは明らかですね。この2つを音量で区別し、さらに、例えば18-21小節間の和音を考えたとき、少なくとも4小節目はトニック(主和音)になりますので、これは前の和音の解決和音と考え、アクセントは付けません。ですから25小節目には確かにフォルテと書いてありますし、大きな部分ではあるのですが、24と比較したとき筆者であれば25は24よりも大きくしないようにするとは思いますが、25をゴールと考えてもそれはそれで構わないとも思います。

次に、25-29小節間、30-33小節間がそれぞれ、音型的にはペアになります。音量が大きいのは25-29小節間で、30-33小節間は衰退していきます。

このBセクションでも注意することがあります。それは先ほどAセクションと似た注意ですが、8分音符2つのフレーズの時、2つ目は1つ目よりも小さくします。例えば17小節目3拍目の右手Bは、次の18小節目のAsに繋がりますね。この時にAsの音量をBより落とすようにします。以降、たとえどのようなフォルテのセクションに入っても、この秩序を守ります。

この曲はロマン派の曲ですが、テンポは崩れること無く、ルバートもかけず、淡々と進みます。しかし最後の数小節であれば少しテンポを引っ張ってゆっくり目に終わっても良いと思います。

執筆者: 大井 和郎

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