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ドビュッシー :忘れられた映像

Debussy, Claude Achille:Images oubliées

作品概要

楽曲ID:1446
作曲年:1894年 
出版年:1977年 
初出版社:Theodore Presser Company
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:7分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

総説 : 中塚 友理奈 (1533文字)

更新日:2015年6月12日
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1894年作曲。1977年に出版された遺作である。画家アンリ・ルロルの娘イヴォンヌに献呈された。

第1曲〈ゆっくりとLent〉は「憂鬱にやさしく」(mélancolique et doux)と書かれている。冒頭で主題が単独で提示され、その終わりと同時に左手の低音から湧き上がるようにアルペジオが奏でられる。そして再び主題が和音に支えられながら現れ、アルペジオが鳴り響く。その後は重厚な和音が続き、バスのアルペジオと内声の和音とともに主題が奏される。32小節目で嬰へ短調から同主調である嬰ヘ長調に転調し、色彩の変化を感じさせる。その後、遠くから聞こえてくるように主題が現れる。和音の響きは濃厚だが、きわめて静かに終わる。

第2曲〈サラバンドの動きでDans le movement d’une “Sarabande”〉には「いわば壮重でゆったりとした優雅さをもって、ルーヴルの想い出を記念する少し古びた肖像画の感じさえもって......」(c’est-à-dire avec une élégance grave et lente, même un peu vieux portrait, souvenir du Louvre, etc.)と書かれている。この具体的な指示は、厚みのある和音の響きと遅いテンポに反映されている。強弱はpppからff、さらにクレッシェンドやデクレッシェンドも頻繁に現れ、劇的に展開する。平行五度を多用する和声の響きと旋法風の旋律が独自の「優雅さ」を表現している。

第3曲〈《もう森へは行かない》の諸相Quelques aspects de “Nous n'irons plus au bois”〉は「いやな天気だから(parce qu’il fait un temps insupportable.)と言葉が続く。《もう森へは行かない》というのはフランスの童謡のタイトルであり、同曲をモチーフにしたものとして《版画》の〈雨の庭〉がある。

本作品は〈雨の庭〉よりも前に作られた。細かい音価の連符による速いパッセージは両作品に共通するが、本作の方がテクスチュアが厚く、〈雨の庭〉の方がより軽妙である。雨の庭〉の場合、細かいパッセージがほとんど途切れず、重厚な和音も歯切れよく用いている。テンポも一貫して速く、流動的な音の動きの中で、色彩を様々に変化させている。一方、本作品は軽妙さも持ちながら、低音の蠢き、5オクターヴ近くにもわたるダイナミックなアルペジオの波、平行オルガヌムのような4度の連続などによって多彩な表情を見せる。最後の54小節はテンポが遅くなり、GとFisの行き来が動きの中心となる。アルペッジョの箇所でドビュッシーは詩的な指示を書き込んでいる。それを囲むように周りの和声は変化していく。そして左手の和音(Fis-Cis)の構成音でもあるFisに落ち着く。

ところで、アルペジオの音型が導入されるところでドビュッシーは詩的な指示を書き込んでいる。訳は次の通りである。「ここでハープは尾羽を扇状に広げる孔雀、あるいはハープをまねる孔雀(どちらでもお好きなように!)そっくりに模倣し、空は再び明るい装いに同情する Ici les harpes imitent à s’y prendre les paons faisant la roue, ou les paons imitent les harpes (comme il vous plaira !) et le ciel redevient compatissant aux toilettes claires.」「装いtoilettes」にはとくに「女性の着こなし」という意味がある。

執筆者: 中塚 友理奈

楽章等 (3)

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ルーヴルの思い出

総演奏時間:6分00秒 

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嫌な天気だから「もう森へは行かない」の諸相

総演奏時間:4分00秒  ステップレベル:展開1,展開2,展開3

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